愛知豊明・母子4人殺人放火事件

何者かが侵入、一家殺害後に放火。現在も犯人発見に至らず。

2004年9月9日午前4時25分、愛知県豊明市の加藤博人さん(当時45歳)宅で火災が発生した。まもなく鎮火したが、残業中だった加藤さんをのぞく一家4人が遺体で発見された。調べによると、家に侵入した何者かが一家を惨殺した後、火をつけたものと見られる。

殺害されたのは母親(38歳)、長男(15歳)、長女(13歳)、次男(9歳)。父親は仕事のため家におらず、無事だった。また、父親が前日の午後11時頃に母親へ残業の電話をした際には、被害者宅に異変はなかった。

容疑者は検挙されておらず、現在も未解決事件となっている。

事件の経緯

愛知県豊明市に住む加藤博人さん(当時45歳)一家は妻・利代さん(38歳)、長男・佑基君(15歳)、長女・里奈さん(13歳)、次男・正悟君(9歳)の5人家族。

加藤さんは小牧市にある大手自動車会社の子会社である自動車部品メーカーに勤めている。妻・利代さんとは職場結婚で、結婚後に利代さんは会社を辞めたが、ここ数年は精力的に競馬場や会社の事務のアルバイトに出ていた。

事件当日

2004年9月8日夜、この日加藤さんは会社で残業していた。午後11時に加藤さんは自宅に電話に入れている。

やがて日付が代わる頃、それまでこんな時間まで残業していたことはなかったが、下半期の利益計画書を締切が10日だったため加藤さんは同僚とともに夜通しで作成にあたらなければならなかった。

9日午前4時5分頃、加藤さんの自宅で火災が起こる。加藤さんは近所に住む兄から家の火災を知らせる第一報が会社に届き、同僚に「家が燃えているから戻る」とパソコンを起動したまま飛び出していった。

5時半過ぎ、火がほとんど消えかけた頃、加藤さんが作業着姿のままフラフラした足取りで自宅に戻ってきた。加藤さんは変わり果てた家を見て「子どもはー、子どもはー」「利代ー」などと泣き叫んだ。加藤さんは家族を助けようとまだ煙のたちこめる家の中に入ろうとしたが、消防団員や兄らに制止された。

まもなく1階の居間で正悟君が、2階の各寝室で利代さんと里奈さんと佑基君が遺体となって発見された。また、この他、2階で発見された母親・長男・長女の遺体には発見時、布団がかけられていた。

当初は事件性のない民家火災と思われたが、室内の灯油を撒いた跡や遺体にも損傷の痕跡があったことなどから、愛知県警察はすぐさま殺人放火事件の捜査に切り替え、特別捜査本部が設置された。

殺害されていたことが発覚

事件後まもなく、これがただの火災でないことが判明。加藤さん一家の母子4人は殺害されたのちに火をつけられたことがわかった。

この事件の不審な点として、一家の男女がそれぞれ別々の凶器で殺されていたことがある。

利代さんと里奈さんはともに刃物で刺されており、里奈さんは背中を中心に顔や頬など十数ヶ所、里奈さんは肋骨が折れるほど上半身を何度も刺されていた。いずれも執拗とも思えるほど繰り返し刃物を振り落としている。

一方、佑基君と正悟君は鈍器で撲殺されていた。バールのようなもので頭部を一撃されていたという。4人とも抵抗した形跡は見られず、就寝中に襲いかかったと見られる。

現場からは凶器は発見されず、庭や周囲の道路からもルミノール反応は出なかった。このため犯人は殺害後、加藤さん宅内で着替えた可能性もある。

遺体の肺からは微量のすすが検出されており、これは放火した後も家族に息があったことを意味する。犯人はおそらく、一家惨殺後に間髪入れず大量の灯油でを撒き火をつけたと見られている。

襲われた4人が息絶えるまでに吸い込んだすすの量は、1階の正悟君がもっとも少なく、2階の佑基君が一番多かった。このことから正悟君が真っ先に襲われた可能性が高く、続いて利代さん、里奈さん、佑基君の順に死亡したとみられている。

不明なのが侵入経路で、この夜は2階の佑基くんの部屋の窓が網戸だった以外はきちんと施錠されていた。だが前述の通り、2階の佑基君宅から侵入したのなら、1階の正悟君が真っ先に殺された点で矛盾が生じる。

加藤さんは家の鍵を持ち歩く習慣がなく、深夜に帰宅した時は勝手口の傍に隠してある合鍵で出入りしていた。だが、事件当日も鍵はそのままの状態で隠されていた。

自宅にあった貴金属や通帳、カード類は残されており、物盗りが目的ではないと考えられている。犯人は凶器や放火の準備もしていることから、複数による殺害目的の犯行と言う見方が強い。

一家は数年前、「物騒だから」と番犬に柴犬の「ジャッキー」を飼いはじめた。だが事件当日、ジャッキーが吠える声を聞いた人はいない。消火活動の間、利代さんの愛車「エスティマ」の下に隠れて、ふるえて燃える家を見ていたという。

灯油の撒かれた跡は遺体周辺の他、被害者宅の広範囲に及ぶが、一方で被害者宅には灯油が元々なかったとされており、犯人が持ち込んだものとみられている。被害者宅から散乱したマッチの燃えかすや灯油が染みこんだ新聞紙も発見されており、火をつけて逃走し逃げる時間を稼いだ可能性も考えられる。

また、被害者宅周辺、庭や犯人が逃走したと思われる道路などからは犯人の血液反応が出ておらず、殺害時に返り血を浴びた犯人が着ていた衣類なども現場で一緒に焼却した可能性がある。その他、犯人の遺留品などは見つかっていない。

午前4時頃、女性の悲鳴が近隣住人に聞かれたとする報道もあり、犯行は30分ほどと比較的短時間で行われたものと思われる。

不明な犯行動機

2003年7月下旬午後8時半頃、に何者かが加藤さん宅のドアを無理やり開けようとする出来事があったという。

当時、地域の夜間パトロールに出ていた利代さんの携帯電話に自宅にいた正悟君から「誰かがドアをがちゃがちゃしてる」と連絡が入った。利代さんは「開けちゃダメ」と話し、パトロールをつづけた。

この事件の後、利代さんが今年に入っても自宅の様子をうかがう不審者の存在を周りの人に漏らしていた。利代さんは次第にそうした不審な人物に用心深くなり、家の施錠はきちんとしていた。

事件当日には消防団員や近所の住民が普段は見かけない尾張小牧ナンバーでハイエースのスーパーGL(モスグリーンカラー)を見かけたという。

また午後4時ごろには加藤さん方から女性の悲鳴が聞こえたという証言もあった。