埼玉県ふじみ野プール死亡事故

7歳の少女が流れるプールで死亡!責任転嫁によって引き起こされた事故

2006年7月31日、埼玉県ふじみ野市大井プールで、小学2年生女児が流水プール吸水口に吸い込まれ死亡した事故である。

事件の経緯と詳細

2006年7月31日、埼玉県ふじみ野市大井プールで、所沢市立小手指小学校2年生の戸丸瑛梨香ちゃんが、流れるプールの吸水口に吸い込まれ死亡した。

営業時間中、プールの吸水口の柵が外れてしまったため、補修までの間に口頭により吸水口に近づかないよう注意を行なっていた。そんな中、13時40分頃、母親の目の前で、瑛梨香ちゃんが「流れるプール」の吸水口に吸い込まれて行った。瑛梨香ちゃんが吸水口に吸い込まれる際、母親が脚を掴んで娘を引き戻そうとしたが、吸引力が強く「ドーン」とい大きい音とともに、吸い込まれていってしまう。

13時50分頃、「女の子が排水口に挟まれている」と119番通報、事故発生後の10分後に消防と警察が到着、直ちにポンプ車で排水を始める。直径30㎝のパイプの排水口からおよそ10m入ったところで瑛梨香ちゃんとみられる女の子を発見した。

16時45分頃、事故発生からおよそ3時間後に重機での解体による救助に取り掛かった。解体着手からおよそ30分後、少女の指先を確認し、そこから重機で少女の体が入っていると思われる吸水管を掘り出した。救助活動は難航し、救出のためプールサイドを重機で掘り返すなど、事故発生から病院搬送まで約6時間を要した。

19時30分頃、瑛梨香ちゃんの体をパイプから開放し、病院に搬送するが、20時8分に死亡が確認された。司法解剖の結果、吸い込まれて脱出不可能になったことによる窒息死ではなく、急なスピードで吸い込まれ、水路壁面に強く頭を打ち付けられたことによる脳幹損傷による即死だった。

事件の発生要因

施設全体には、現場責任者1名、アルバイト監視員13名、看護師1名が在中していたが、プール監視員に対して適切な教育・指導を実施しておらず、また施設の安全構造に問題があった。また、施設管理において吸水口の防護柵が固定されていなかった。市から委託を受けた受託事業者は無断で下請けに丸投げし、指導監督していなかった。さらに、施設管理者である市教育委員会は、安全点検作業を行わず、適正な業務履行に関する監督検査、及び履行確認を行っていない。これらずさんな管理が積み重なり、小学2年生の女児が吸水口吸い込まれる死亡事故が発生してしまった。

従業員は、吸水口の危険性と防護柵の役割を把握していなかった。このため、脱落した防護柵を遊泳者から監視員に届けられてが、受け取った監視員は何の柵であるか直ちに判断することが出来なかった。

さらに、吸水口の防護柵が外れていることを認識した際、監視員に対して遊泳者への注意喚起の指示に留まり、自らは防護柵の再取付けのため針金を取りに行っていただけで、その他の措置を講じなかった。また、開業前の施設点検において防護柵の取付けについてねじの代用として針金が使用されていたが、点検管理を継続的に繰り返すのみであった。このような結果から、現場管理責任者の知識は、経験や危険認識が欠如していた。

従業員は、事故発生前に防護柵が外れている事実を認識し、大変危険な状況であるにも関わらず、遊泳者を直ちにプールから上げる。吸水ポンプを緊急停止するなどの措置を講じる。その必要性を認識していなかった。
重要な安全対策である吸水口の防護柵が本来のボルト止めではなく、針金止が常態化し、プール監視員はその危険性を認識していないため見過ごされていた。市より管理委託を受けていた委託業者は下請け業者に丸投げしていた。また、市と委託業者ともに下請け業者に対して適切な指導監督を怠った。

さらに、吸水口そのものに安全構造上の問題があった。2006年の通知された基準では、「排(吸)水口は、二重構造とし、一重目として排(吸)水口は、 堅固な金網や格子鉄蓋等を設けてネジ、ボルト等で固定させるとともに、二重目としてその先の配管口は金具等(吸い込み防止金具)を設置すること」と明記されていた。

しかし、配管口は金具等(吸い込み防止金具)が設置されておらず、通知後も必要な改修工事が行われず、構造上の問題が放置されていた。

判決とその後

2006年11月15日、業務上過失致死罪の容疑で職員ら6名が書類送検される。

2007年6月8日、業務上過失致死罪で6名のうち2名を在宅起訴され、残りの4名が起訴猶予処分となった。

2008年5月27日、さいたま地方裁判所にて、ふじみ野市職員の課長職は禁固1年6月に執行猶予3年、同職員の係長職は禁固1年に執行猶予3年、控訴後に判決が確定した。地方公務員法の規定に基づき、事故後に定年を迎えた課長職は退職金が支給されず、係長職は失職となった。

さらに、2007年3月24日に、被害女児の両親と、ふじみ野市・プール管理会社との間で損害賠償の示談が成立した。重機でプールサイドを掘り返す等をしたプールは使用不能となり、そのまま閉鎖してしまった。

その後、プール場は解体されてテニス場として、現在は使用されている。