愛知県蒲郡市・義母介護殺人事件

「『いい嫁』と言われなくてはならない…」老々介護の末、義母の首をひもで絞め殺害。

2019年7月7日、無職・大塚文子被告(71歳)が義母のキヨ子さん(96歳)の首をひもで絞め殺害した。

県警によると、キヨ子さんは寝たきりの状態で、大塚は周囲に「介護に疲れた」と話していたという。

事件の経緯と詳細

大塚被告はキヨ子さんとキヨ子さんの長男にあたる夫と3人で生活。以前から介護をしていたが、2018年5月にキヨ子さんが転倒して歩行困難になると、排泄(はいせつ)などの介護負担が増加。ショートステイの利用はキヨ子さんが帯状疱疹(ほうしん)になり見合わせた。不眠の症状も出て、介護を続けられないと不安を募らせていた。

判決によると、大塚被告は、2019年7月6日午後11時半から翌7日午前5時ごろの間、義母の大塚キヨ子さんの首をひもで絞めて殺害した。

『いい嫁』と言われ、私が世話するものと

なぜ周囲からの援助が得られなかったのか。

「年老いてからはずっと『いい嫁』だといってくれた。おばあちゃんの世話は私がするものだと思っていた」

大塚被告は公判で、こう証言した。事件のきっかけは、昨年春に義母が歩行困難になったのを機に、介護の負担が増えたことだ。

数年前から続けていた孫の世話の回数も減らし、献身的に介護した。一方で、不安から一睡もできなくなった。周囲に「私が死んだらどうなる」と漏らすようになっていた。

公判で夫は、「文子は母親に頼りにされていた。任せていたから、自分でやろうという考えはなかった」と語った。事件直前に大塚被告から相談を受けた妹も「やはり昔人間ですから、(介護は)女の人でないと。姉の夫には全面的には頼めないと思った」と述べた。

介護問題に詳しい日本福祉大の後藤澄江教授(社会福祉学)は「どの家族でも起こりうる。介護する側は早めにSOSを発して、分担しあう。介護される側も、行政や民間のサービスに頼ることは悪いことではないと理解する必要がある」と話した。

判決とその後

2019年7月24日、名古屋地検豊橋支部は刑事責任能力の有無を調べるための鑑定留置を請求し、豊橋簡裁が同日付で認めた。期間は25日から11月18日。

2020年6月29日、裁判員裁判の初公判が名古屋地裁岡崎支部であった。大塚被告は「間違いありません」と起訴内容を認めた。

同年7月10日、殺人罪に問われた無職大塚文子被告に対する裁判員裁判の判決が、名古屋地裁岡崎支部であった。石井寛裁判長は「周囲から十分な援助が得られず、精神的に追い込まれた」とし、懲役3年執行猶予5年(求刑懲役6年)を言い渡した。

判決では、義理の妹に介護の手助けを求めたが遠回しに断られ、夫に介護を行うのが限界と告げたが、夫から具体的な提案はなかったとも指摘した。

量刑の理由では、「家族に迷惑をかけたくないという動機から犯行を実行したことは非難されるべきだ」と指摘。一方、親族や夫に助けを求めていたことも認め、「負担軽減策を十分に講じなかったことについて、被告のみを責めることはできない」として、執行猶予が相当とした。