東池袋自動車暴走死傷事故

2020年09月

上級国民という言葉を生んだ、元官僚の起こした死亡事故。

出典:https://bunshun.jp/articles/-/13431

2019年(平成31年)4月19日12時25分頃、東京都豊島区東池袋の東京メトロ東池袋駅付近の交差点において通商産業省(現経済産業省)の元職員で無職の男性(87歳)が運転していた乗用車が暴走して多重衝突事故を起こした。

乗用車は赤信号を無視して交差点内の横断歩道に突っ込むなどして2人(母子)が死亡し、乗用車を運転していた男性を含む10人が負傷するという大変痛ましいものであった。

車を運転していた男性は赤信号を2回無視しており、ブレーキをかけた形跡もないことがドライブレコーダーの記録から判明している。男性は事故直後に息子に電話をかけ「アクセルが戻らなくなり、人をひいた」と説明した。一方、警視庁は調査の結果、車に不具合は見つからずエアバッグは正常に作動していたとする。当初は男性とその同乗者(1人)を含む負傷者8人・死者2人と報道されていたが、24日になって警視庁は新たに別の母娘が軽傷を負っていた事実が判明したことを明らかにした。そのため、運転者男性を含めて死傷者は計12人となった。死亡した2人の告別式は2019年4月24日に開かれた。

事故当時の様子

加害者が運転していた自動車のドライブレコーダーには、事故前後の様子が録画されていた。警視庁によると事故現場付近の左カーブの辺りで加害者の妻が「危ないよ、どうしたの」と声をあげ、加害者は「あー、どうしたんだろう」と応じた直後に車道左側、金属製の柵、縁石に衝突。周辺の防犯カメラの映像によると、そのままパニックとなって時速100kmに近い速度で交差点に進入。ごみ清掃車両と衝突し横転させて、回転。交差点周囲の多数の自転車、歩行者などを巻き込んだと見られる。

遺族の会見

24日、死亡した2人の遺族の男性が記者会見を開いた。まず事故現場の献花台に溢れるほどの花を手向けた人、亡くなった2人に寄り添い心を痛めた人の温かい心に感謝を述べた後、「最愛の妻と娘を突然失い、ただ涙することしかできない」と絶望と苦しい心境を吐露した。2人の写真を公開した経緯については「今回の事故での(2人のような)被害者と私のような悲しむ遺族を今後絶対に出してはいけないとも思いました。そのために、私は(2人の)画像を公開することを決断しました」と説明した。

7月18日、遺族の男性が再度記者会見を開き、娘の動画を公開。「亡くなった愛する2人との日常がとても幸せでした。交通事故は誰かの日常や命を奪ってしまう」と強調した。更に「今後、被害者と遺族がいなくなるように、加害者には厳罰を望みます」と車を運転していた男性に対して厳罰を求める署名運動を始めたことを公表した。遺族の男性はブログを開設し、署名活動の詳細や署名用紙を掲載。また、8月3日には娘とよく遊んだという南池袋公園で署名を募った。8月30日にも会見を開き、厳罰を求める署名が29万筆を超えたこと、署名活動を9月中旬まで続けることが発表された。最終的には、署名は39万1136筆となり、速やかな送検や起訴を求める要望書が東京地検に提出された。

事故の影響・波紋

本事故については、警察が運転者を現行犯逮捕しなかったことや、報道が「容疑者」ではなく、敬称や肩書きで呼称したことについて、警察やメディアが特別扱いしているのではないかと批判の声があがったことが報じられている。

運転者が元官僚だったことから、インターネットでは本事故を起こした男性について「“上級国民"だから逮捕されないのか」との書き込みが相次ぎ、拡散されているという。また、同月21日に神戸市で発生した神戸市営バスによる交通死亡事故で、バスの運転手が現行犯逮捕された事例ともネット上では対比されていることも報じられている。

捜査関係者は「逮捕しないのは、事故を起こした人物も負傷して入院しており刑事訴訟規則が要請する『逃亡や証拠隠滅の恐れがある場合』との逮捕の要件を満たさないため」であり「元官僚だったというのは事故発生からしばらくたった後に判明したことで、ネット上の批判は当たらない」と説明している。

当事故の加害者(被疑者)が「容疑者」ではなく敬称で呼ばれている点について、朝日新聞は「社会的影響力のある公職に就いていたことを伝えるため」、西日本新聞は「逮捕前は敬称や肩書を付けるという明確なルール」によると答えた。 尚、本件の加害者については、同年5月31日、東京都公安委員会によって運転免許を取り消す行政処分が決定された。