岩手17歳女性殺害事件

2020年09月

事件後4カ月で異例の「懸賞金」、事件を追っていたジャーナリストが自殺した事件

2008年7月1日午後4時半ごろ、岩手県下閉伊郡川井村(現:宮古市)の河川で17歳女性Bの他殺体が道路工事作業員によって発見された。

司法解剖の結果、死亡推定時刻は6月30日から7月1日であり、死因は頭部の外傷か首の圧迫とみられ、首を絞められ瀕死の状態となった後に橋から突き落とされた可能性が高いとみられる。

犯行の経緯や動機

遺体発見の3日前となる6月28日、女性Bさんは男性Xから呼び出された。Bさんと一緒にいた知人男性によると「恋の悩みについて相談をしたい」と持ちかけられたとのことだった。

この時、彼女は冗談めかした口調ながら「私、殺されるかも」と言っていた。また、彼女は、自分とまったく同姓同名の友人・女性Aさんと29日まで電話とメールのやりとりをしていた。

女性Bさんの遺体発見後となる7月1日の午後9時過ぎ、岩手県田野畑村で小原が運転する車が電柱に激突。

通りがかった地元男性が、小原を彼の実家まで送っていったが、酔った状態で右手から血を流し「もう俺はおしまいだ。死ぬしかない」と口走っていたという。

7月2日午前、男性Xは、田野畑村にある自殺の名所として有名な鵜ノ巣断崖の写真を添付して「俺、死ぬから」と女性Aにメールを送信。弟(次男)には「サヨウナラ、迷惑な事ばかりでごめんね」と送った。また、知人に「飛び降りる」と電話している。

翌7月3日に断崖現場から男性Xが所持していたサンダルや財布、煙草などの遺留品が発見されたが、遺体は発見されなかったため、偽装自殺と判断された。

ジャーナリストの黒木昭雄氏は、男性Xを「被害女性Bの殺人犯」と断定した岩手県警察に疑念を抱き、この事件について独自のリサーチをしていた。

事件をについて独自に調査を進める過程で、黒木さんは、警察の見立てたストーリーが全く間違っているという強い疑念を抱くようになり、捜査の見直しを強く求めていた。

しかし、捜査の見直しと真相究明を掲げて、署名運動や警察・行政への申し入れを繰り返したものの、警察の捜査の見直しは行われないまま、男性Xが犯人だと断定され、精神的に追い込まれる状況になった。

そして、2010年11月2日、千葉県市原市今富の寺の敷地内に停まっていた乗用車内で、ジャーナリスト黒木昭雄さん(享年52歳)が変死しているのを長男が見つけ、すぐに119番通報をしたが、救急隊員が駆けつけた時には黒木さんは既に死亡しており、後部座席には練炭を燃やした跡があったことや、自宅から大量の睡眠薬を持ち出したとの情報もあったこと、弁護士宛に遺書を残していたことから自殺と断定されている。

しかし、「俺が死んだら、警察に殺されたと思ってくれ」

という言葉が口癖だったことや、弁護士に宛てた遺書の文中に「今さら言う事もありませんが、岩手の事件が私の人生を変えました。それについては後悔していません」という一文があったことで、大きな話題となった。

男性Zの脅迫事件

2006年10月頃に男性Xは、東北地方沿岸部に住む男性Z(当時30歳代)の紹介で関東地方にある就職先を斡旋してもらったが、男性Xは数日で仕事場から逃亡した。

2007年5月1日夕方、男性Xは紹介された就職先に対してメンツが潰されたことを理由に男性Zから迷惑料を要求される。

男性Zは男性Xに日本刀を咥えさせ、「迷惑料が払えないなら、指を置いていけ」と指詰めを示唆する言動で脅し、120万円の借用書を書かせた。この時、Xは交際中の女性A(1年3ヶ月後に発生する殺人事件の被害女性Bと同姓同名で高校時代の同級生)を保証人とした120万円の支払いを約束させられ、女性Aの名前と携帯番号をその場で書かされた。

しかし、男性Xは120万を払わずに男性Zから逃亡。男性Zは携帯サイトに男性Xの実名と身体特徴と顔写真を添付して「金を払わず逃げ回っているとんでもないやつ」として携帯サイトに書き込みをした(携帯サイトは殺人事件から間もない2008年7月15日付けで閉鎖されている)。

2008年6月3日、男性Xは男性Zを被疑者とする恐喝事件の被害届を提出。

殺人事件が起こる直前の6月28日昼過ぎを境に男性Xは被害届の取り下げを主張(被害届自体は最終的に取り下げはされていない)。

そして、当日午後10時30分頃に男性Xは前述の女性Bを呼び出し、3日後の7月1日に女性Bが他殺体で発見された。

男性Zは恐喝事件について、自分は日本刀を所持しておらず指詰めも迫っていないと恐喝を否定。

金額も120万円ではなく10万円であり、ネットへの書き込みは自分が思うことを書き込んだだけと主張している。

指名手配に対する訴訟

男性Xの家族は「殺人犯と断定したことに納得できない」として、人権救済の申し立てを起こしている。

男性Xは小指と薬指にケガをして事件2日前の6月29日夜7時頃に病院に診察に訪れて右手の握力が無く、右手全体が動かない状態だと診断されており、殺害時期において被害女性Bの首を絞めて一人で遺体を投げ捨てることは不可能としている。

その後

2008年7月29日、警察は男性Xを女性Bの殺人容疑で全国に指名手配した。

事件直後に自損事故を起こして放置された男性Xの車の中から見つかった血痕や遺留品の鑑定などから、警察は男性Xを女性Bを殺害した犯人と断定した。10月31日、事件は捜査特別報奨金制度に指定(100万円)された。

2010年6月30日、指名手配されている容疑者男性Xの父親が、国や県に対して指名手配の差し止めと損害賠償を求める訴訟を起こした。

2010年11月1日、黒木さんが亡くなった当日、懸賞金が300万円に増額された。

2014年4月11日盛岡地裁は請求を棄却。原告側が控訴はせずそのまま確定した。請求は棄却したものの指名手配のポスターの「犯人」表記については、「無罪推定に反する」と結論付けた。