加茂前ゆきちゃん失踪事件

「ミユキ カアイソウ カアイソウ」謎の怪文書が届けられた少女失踪事件。

1991年3月15日、三重県四日市市富田在住の加茂前芳行さんの三女・ゆきちゃん(当時8歳)が、この日の夕方、自宅から突然姿を消した。

温められたココアがそのままになっていたことや、まだ寒い時期だったのにもかかわらず、いつも着ていたピンク色のジャンパーが家に残されたままだったことなど不審な点が多く、自ら失踪したとは考えにくい。

また、事件から3年後、間違った宛名の怪文書が届いたり、2003年10月には、若い男の声で「自分の髪型はパンチパーマだ」という捜査関係者にしか知らされていなかった情報を話す不審な電話があったりしたことなどから、雑誌やテレビ番組などでも取り上げられた.

ゆきちゃんの家族自身もテレビ番組に出演したり、ビラや看板を作成して情報提供を呼び掛けたりした。

しかし、事件から約30年が過ぎようとしている2020年5月現在まで、ゆきちゃん発見につながる有力な情報は届けられていない。

ゆきちゃんは「昭和57年5月9日生まれ」なので、2020年5月20日現在は、38歳ということになる。

失踪までの経緯と不審な点

当日。温められたココア。

板金工場で夜勤をしていた父・芳行さんはいつも夕方6時に家を出て翌朝帰宅する生活で、妻・市子さんも当時パートに出ていた。

事件当日、当時小学2年生だったゆきちゃんは、午後2時頃に友達と別れ、家に帰ってきた。

この時間はいつもお父さんがぐっすり眠っている時間で、ゆきちゃんはいつもお父さんを起こさないようにと静かにするようにしていたため、芳行さんはゆきちゃんの帰宅に気づくことはなかった。

午後2時半、母・市子さんがパート先から自宅に電話し、ゆきちゃんがこれに応答。

その後、午後4時頃に小学6年生の二女の姉が自宅に帰ってきたが、そのときには既にゆきちゃんの姿はなく、テーブルの上にはまだ温かいココアが残されたままだった。

ゆきちゃんはココアが好きで、よく自分で作って飲んでいたという。

ちなみに、三重県警が情報を呼びかける際に掲示したWEBページでは、ゆきちゃん失踪の時刻が「14:30」と記されていた。

午後4時ごろ、父・芳行さんが起床したが、ゆきちゃんは帰宅後よく友だちと遊びに出ていることが多かったため、ゆきちゃんの不在をあまり気にはしなかった。

その後、母・市子さんや長女も帰宅したが、ゆきちゃんは夜になっても家に戻らなかった。

午後8時、家族が警察に連絡、家族はもちろん、小学校の先生たちも一緒になってゆきちゃんを捜索したが、ゆきちゃん発見には至らなかった。

不審な点と目撃証言

不審な点

1.ゆきちゃんが遊びに行く時にいつも乗っていた自転車が、家に置きっぱなしになっていた。
2.ゆきちゃんが温めたと思われるココアが、机の上に置かれたままになっていた。
3.まだ寒い時期だったにもかかわらず、ゆきちゃんがいつも着ていたピンク色のジャンパーが家に残されていた。
4.失踪当日、ゆきちゃんは友人からの遊びの誘いを断っており、他に何か用事があった可能性がある。

目撃証言

・学校のジャングルジムで遊んでいた。
・学校の横の十四川付近で遊んでいた。
・自宅から15mほどの地点で、白いライトバンの運転手と話していた。
・学校の近くの近鉄・富田駅にいた。

怪文書、ダウジング、パンチパーマ

ゆきちゃんの家族は、情報提供を求めるビラや看板を作ったり、TV番組に出演したりして事件の手がかりを待った。

身代金の要求や脅迫電話などが来ることに備え、自宅の電話には逆探知装置が取り付けられたが、そういった電話はくることはなかった。しかし、無言電話が頻繁にくるようになったという。

事件から3年後、「加茂前秀行様」という間違った宛名で、後述の怪文書が届けられたが、ただただ不気味な内容というだけで、手掛かりにはならなかった。

それからしばらくして、一家にもう1通の手紙が届けられた。

ダウジング(地下水や貴金属の鉱脈など隠れた物を、棒や振り子などの装置の動きによって発見できると謳う手法)ができるという人物からの、捜査協力の申し出であった。

差出人は、福岡県に住む「緒方達生」という人物で、「ゆきちゃんはすでに亡くなっている」「ゆきちゃんの霊の協力の元、捜査をする」「犯人は顔見知りであり、男女二人の犯行(怪文書の内容と一致)」という内容だった。しかし、それからさらに3日後、緒方から再び手紙が届き、「ゆきちゃんの霊を邪魔する別の霊が現れ、捜査に協力することができなくなった」という内容だった。

それ以降、不審な手紙が届くことはなくなった。

そして、2003年10月、一家に不審な電話がかかってきた。若い男の声で、自分の体格や髪型などの特徴を述べたという。この中で「自分の髪型はパンチパーマだ」という発言があったのだが、「パンチパーマの男」というのは失踪当時の目撃情報で出てきた白いライトバンの運転手の特徴であり、この情報は関係者(または犯人)しか知りえない情報であった。

しかしこれも

怪文書「トミダノ股割レ」

怪文書の内容については、書籍『公開捜査 消えた子供たちを捜して!―続発した行方不明事件の謎』(近藤昭二著/2000年6月1日出版)を元に紹介する。

怪文書は全3枚にわたって記述されているが、下の画像でわかる通り、そのどれもが判読困難なものであるため、前述の書籍で「訳された」内容を「原文」として扱うこととした。

1枚目

 ミゆキサンにツイテ
 ミユキ カアイソウ カアイソウ
 おっカアモカアイソウ お父もカアイソウ
 コンナコとヲシタノハ トミダノ股割レ
 トオモイマス
 股ワレハ 富田デ生レテ 学こうヲデテ
 シュンガノオモテノハンタイノ、パーラポウ
 ニツトめた
 イつノ日か世帯ヲ持チ、ナンネンカシテ
 裏口ニ立ツヨウニナッタ
 イまハー ケータショーノチカクデ
 四ツアシヲアヤツツテイル
 ツギニ
 スズカケのケヲ蹴落シテ、荷の向側のトコロ
 アヤメ一ッパイノ部ヤデ コーヒーヲ飲ミナ
 ガラ、ユキチヲニギラセタ、ニギッタノハ 
 アサヤントオもう。
 ヒル間カラ テルホニハイッテ 股を大きく
 ワッテ 家ノ裏口ヲ忘レテ シガミツイタ。
 モウ股割レハ人ヲコえて、一匹のメス 
 にナッテイタ。
 感激ノアマリアサヤンノイフトオリニ動い

2枚目

 タ。ソレガ大きな事件トハシラズニ、又カム
 チャッカノハクセツノ冷タサモシラズニ、ケッカハ
 ミユキヲハッカンジゴクニオトシタノデアル
 モウ春、三回迎エタコトニナル
 サカイノ クスリヤの居たトコロデハナイカ
 トオモウ
ダッタン海キョウヲ、テフがコエタ、コンナ
 平和希求トハチガウ
 ミユキノハハガカ弱イハネヲバタバタ
 ヒラヒラ サシテ ワガ子ヲサガシテ、広い
 ダッタンノ海ヲワタッテイルノデアル
 股割れは平気なそぶり
 時ニハ駅のタテカンバンニ眼ヲナガス
 コトモアル、一片の良心ガアル、罪悪ヲ
 カンズルニヂカイナイ
 ソレヲ忘レタイタメニ股を割ってクレル
 オスヲ探しツヅケルマイニチ

3枚目

 股ワレワ ダレカ、ソレハ富田デ生レタ
 コトハマチガイナイ
 確証ヲ?ムマデ捜査機官に言フナ
 キナガニ、トオマワシニカンサツスルコト
 事件ガ大キイノデ、決シテ
 イソグテバナイトオモウ。
ヤツザキニモシテヤリタイ
 股割レ。ダ。ミユキガカアイソウ
我ガ股ヲ割ルトキハ命ガケ
 コレガ人ダ コノトキガ女ノ一番
 トホトイトキダ

文章の特徴

1.漢字・ひらがな・カタカナが混在している。

2.鉛筆の上から、ボールペンでなぞるようにして書かれている。

3.下書きをしていることから、わざと下手な字で書いた可能性がある。

4.文中の「」の記号のみ、赤いボールペンで書かれている。

5.暗喩を主として記述されているが、全く理解できない・意味のない文章にはなっていない。

6.基本的に平易な言葉で記述されているが「平和希求」の文言に限っては、日常の会話で用いるような一般的な言葉でないように思われる。

前述の書籍においても、この文章の解読が試みられているが、本記事では解釈については行わない。

てるくはのる事件」に代表されるように、ただの「意味のない文字列」が「勝手な解釈や憶測」によって、いわれのない方々の名誉や生活が傷つけられることは、決してあってはならないことだと思う。

独自の解釈や推理を繰り広げることは個人の自由かもしれないが、あたかも「真実に近いのではないか」と思われるような解釈の出現によって、逆に捜査の進展が妨げられる可能性があることにも、よく注意しておきたい。