室蘭女子高校生失踪事件(千田麻未さん失踪事件)

前代未聞の未解決事件。警察の初動捜査に致命的なミスか。

2001年3月6日、人通りの多い昼間の繁華街で、アルバイト先に向かう北海道室蘭栄高等学校一年生の千田麻未さん(当時16歳)がバス停で忽然と姿を消し、そのまま行方不明になった。

事件発生から18年経った今も、行方どころか事件の詳細もわからず、多くの謎を残したまま未解決事件へと発展した。

事件の経緯(詳細)

2001年3月6日、11時30分頃、麻未さんは、もともと自宅から近くのパン屋の支店でアルバイトをしていたが、高校の帰りにアルバイトができるように本店勤務を希望しており、そのために、コーヒーの研修を受けるべく、「13時過ぎに行きたいのですが、オーナー(店長)はいますか?」とパン屋の本店に電話をかけていた。電話に出たのはオーナーではなく、女性の従業員だった。電話後、麻未さんは白鳥台の自宅を出て、パン屋本店に向かった。

その日は、公立高校の入試日で麻未さんの通う学校も休みだったため、当時の服装は、制服姿ではなく、紺のジーンズ、ベージュのブラザー、バーバリーのマフラーだった。

12時25分頃、自宅近くのコンビニに立ち寄った後、道南バス停留所に向かい、「白鳥台中央」から12時25分発「東町ターミナル」行きのバスに乗車した。コンビニを経由した事は、コンビニの監視カメラに写っており、パン屋に向かう循環バスに乗ったことも車内から外の友人に手を振ったことで確認が取れている。

12時56分頃、麻未さんを乗せたバスは、パン屋から一番近い「東通り」のバス停に到着したものの、何故か麻未さんはそのバス停で降りなかった。

13時頃、降りるべき「東通り」から3つ先の停留所「東町2丁目」で麻未さんが下車。この時、同級生の男子生徒2名からの目撃情報があり、麻未さんはこの2名と道路腰に挨拶をしている。東2丁目で下車した麻未さんは室蘭サティ(現在はイオン)に立ち寄り、13時4分から13時26分まで、化粧品売り場にて何もせず過ごしているのを店の防犯カメラが記録している。

麻未さんはこの後、パン屋本店に向かう為に室蘭サティ横のバス停「東町2丁目」から、13時31分に発車する「中央町・工大循環線(外回り)」のバスに乗り、パン屋から近い「東通り」のバス停で13時41分頃に下車したと推測されている。当時このバスには23人の乗客がいたが、麻未さんの目撃情報を得られず、室蘭サティからの足取りは、あくまで推測である。道南バスによると、通学定期券を使用した人が1人いたそうで、その人物が麻未さんなのではないかと推測されている。

今、下についたよ

13時42分頃、麻未さんの交際相手がバスを降りてすぐ、彼女のPHSに電話をかけていた。その時、麻未さんは「今、下(市街地のことを下、麻未さんが住んでいる白鳥台を山と呼んでいた。)についたよ」と話しており、PHSの交信記録によるアンテナの中継場所は道南バスでパン屋近くの「東通り」停留所付近だった。

13時46分、再び交際相手が麻未さんのPHSに電話をかける。この時、麻未さんは「今話せないから、後でかけ直すね」と話しており、この通話時のアンテナの中継場所もパン屋近くの「東通り」停留所付近であった。通話時の状況を、交際相手は「室内にいるような気がした、特に麻未さんに緊迫した様子はなかった」と証言している。

16時頃、交際相手がもう一度、麻未さんに電話をしてみたが、PHSは通じなくなっていた。麻未さんのPHSは、この日の夕方を境に電源が切られたまま一切の消息がわからなくなった。

帰宅の遅い娘の安否を気遣った両親が、警察に届けを出し他ことによって、正式に失踪事件として受理され、捜査が開始された。警察は麻未さん失踪の通報を受けた直後から、麻未さんが何らかの事件に巻き込まれた可能性が高いと見ていた。

当日のうちに、およそ900枚のビラを市内で配ったと報告され、すぐ見つかるだろうと警察に期待が寄せられていた。

しかし、その後の北海道新聞の調べによると、実際に配られたビラの数は、900枚には到底及ばない400枚だったということが発覚。室蘭市の人口はおよそ8万4千人強。配られたチラシは、その人口の僅か200分の1程度の枚数だった。

初動捜査のミス

さらに、誘拐事件の可能性が考えられる事件の場合、通常なら即座に警察犬が捜査に投入されるはずだが、本件では捜査の初動段階で警察犬は使用されなかった。

本件が未解決事件になったしまった最大の要因は、麻未さんが自分の足で失踪したのか、車に乗せて連れ去られたのかは警察犬を使えばすぐにわかることだったのに、それらを怠った為だった。これに関して、警察は既にある人物に目星をつけていたため、警察犬を使うまでもなく早期解決できるのではないかと判断を下したからではないかと考えられている。

麻未さん失踪から11日後、警察が事件を公開捜査切り替えたことによって、いくつもの情報が寄せられた。しかし、どれも有力な手掛かりとなるような情報はなかった。

麻未さんの当日の服装が制服でなかったにも関わらず、女子高校生といえば制服という先入観があったため、バスの乗客の目撃証言が全くなかった。

また、重要な証拠である防犯カメラの映像が一般に公開されなかった。当時は、現在のように監視カメラが街中に設置されておらず、設置されているところも限られていた。監視カメラの画像公開が、事件から数年経っていたことや、公開されている画像も限定的だったことが思わぬ疑惑を呼んでいた。その疑惑は「万引きなどの犯罪に手を染めていた映像があったため公開が規制されたのではないか?」といった内容だったが、実際に麻未さんが万引きをしていたか定かではなく、情報の出処はわからずじまいだった。

千田麻未さんについて

麻未さんは、当時北海道室蘭市白鳥台という高台の閑静な住宅街にある団地で、両親と弟の4人で暮らしており、トラブルもなく、ごく普通の一般家庭だった。

麻未さんは几帳面で真面目、明るく優しい性格で、成績優秀、容姿端麗と三拍子揃った女子高校生だった。

麻未さんの通う北海道室蘭栄高等学校は室蘭市の中でも1番の進学校で、その中でも麻未さんは、特に勉強熱心で、成績も常にトップクラスをキープする優秀な生徒。美人として有名で、学校ではファンクラブが結成されるほどだった。同級生とも仲が良く、麻未さんが何かに悩んでいる様子も、トラブルがあったとの話もなかった。

しかし、誰からも愛される優等生というプレッシャーに人知れず悩んでいたのではないかという考察もあった。
自宅近くのスーパー内にあるパン屋で麻未さんがアルバイトを始めたのは、事件発生から3ヶ月ほど前の2000年12月。

几帳面で真面目な性格な麻未さんは、遅刻や無断欠勤など、ルーズな事はなかった。麻未さんの友人は、約束の時間になってもパン屋に行かず、室蘭サティにいたという行動に「麻未さんがそんなことをするはずがない」と話している。

様々な説

パン屋本店のオーナー(男性)

事件後すぐに容疑者として挙がったのが、麻未さんがアルバイトをしていたパン屋のオーナーである。警察は、麻未さんが行方不明になった翌朝の3月7日にはオーナーの自宅へ押しかけ、その場で取り調べをし、オーナーを24時間体制で監視した。さらに、3日間に渡って任意で事情聴取もしていた。パン屋の店舗も捜索し、車も押収して調べたが、オーナーと麻未さんの行方不明事件を結びつける証拠は出てこなかった。

当時、オーナーは事件当日の行動について「千田さんを待っていたが来なかったので13時半頃に店を出て、15時に家に戻った」と話していた。同じ店で働く定員は「約束の時間になっても千田さんが来ないので、様子を見てくると言って店の外へ出た」と証言している。加えてオーナーは「用事があって(用事は忘れた)パン屋を出て、一度家に帰りそのまま寝ていた。その後、具合が悪くなり母親の目の前でコタツに入り寝ていた」とテレビ番組『追跡!真実の行方』にて話している。

オーナーは、事件が発生する以前から悪い噂の絶えない人物で、その内容は、「スカートを履いて店に行くと、舐めまわすように見てくる」、「店がどれだけ忙しくても午前中で帰る」、「パートの既婚女性と不倫している」、「麻未さんに交際を持ちかけている」などが多かった。

パン屋のオーナーが所有していたビルには空き部屋があった。1階部分がパン屋で2階と3階は賃貸物件が6軒、空いている部屋は2部屋あった。オーナーは、その空き部屋を居住スペースにしており、その部屋に麻未さんを連れ込むことができれば、人知れず犯行を行う事は可能であると考えられた。しかし、警察は初動捜査で、空き部屋の存在を把握できておらず、「状況的にその間に証拠隠滅を図ることが可能である」という意見がインターネットで根強く支持されている。

ストーカー説

容姿端麗で人気者だった麻未さんは、ストーカーに悩まされていた。この証言は、パン屋のオーナーが警察で証言したものである。普段から、電話やイタズラメールが多いことに麻未さんが悩まされていた事は、麻未さんがアルバイトをしていたパン屋の支店長も知っていた。テレビ番組でオーナーは「白鳥台の自宅付近でストーカーみたいなことがあるって事は聞いたことがあった」とも話している。さらに、同番組で麻未さんの友人、知人らもはっきりとそういった証言をしていた。

隣のビルで行われていた大規模な工事の従業員

当時、パン屋本店の向かいのビルで大規模な工事をしており、中型トラックがかなりの頻度で出入りしていた。トラックを使えば人を運ぶのは比較的容易で、パン屋への食材配達のアルミ車などが工事のどさくさに紛れて、麻未さんをトラックの中に押し込めて連れ去ったことも考えられた。しかし、事件当時にそのようなトラックが出入りしていたという目撃情報はなく、あくまで可能性の話だった。

麻未さんが失踪したのは人通りや車通りの多い繁華街で、その中を人目につかないように連れ去るというのには無理がある。たまたま、人通りがないタイミングで荷台に放り込んだとしても、電話をかけたり大声を出したり、暴れたりできたはずだ。

巡回バスの乗客

事件発生から3年後に発売された『週刊ポスト』では新たな情報と新たな説が浮上した。
事件当日に、麻未さんが13時半頃から13時40分頃まで乗ったと見られる「東二丁目」から「東通り」までのバスには乗客が11人いた。そのうち3人の身元が確認できておらず、室蘭サティからパン屋本店に向かう循環バスの中に、麻未さんを連れ去った犯人がいたのではないかという説である。麻未さんが下車した「東通り」のバス停から、目的地の『パン屋本店』までは、およそ10メートルだが、車も人通りも多い場所だった。

反社会勢力説

麻未さんの若さや容姿に目をつけた反社会的勢力の人間が、人身売買目的で麻未さんを連れ去ったのではないかという説。麻未さんがパン屋付近にいた事は証明されていることと、目撃証言が何もないのはおかしいので、この説は有力ではない。

北朝鮮による拉致説

事件翌日の証言で、北海道室蘭栄高等学校に程近いイタンキ浜で麻未さんに似ている女性を見かけたというものもあった。当時、イタンキ浜では、北朝鮮と反社会勢力が頻繁に出入りしていた。麻未さんの目撃証言が事実なら、北朝鮮の可能性が高い。しかし、周辺住民は口を揃えて「そんな若い子は見なかった」と話している。

北朝鮮に拉致された拉致被害者の方で、平日の白昼に誘拐されており、麻未さんが白昼堂々と姿を消してしまった状況と酷似している。しかし、可能性は低いとされ、警察のホームページの『北朝鮮による拉致の可能性を否定できない事案』というリストに千田麻未さんの名前は記載されていない。

初動捜査のミスと疑問点

初動捜査のミス

・警察犬を使わなかったこと。

・パン屋のオーナーが管理している賃貸物件の空き部屋の存在を見落としていたこと。

疑問点

・何故、麻未さんは13時に約束があったにも関わらず、パン屋本店付近のバス停で降車せず、3つ先のバス停で降りて、室蘭サティに立ち寄ったのか。

・オーナーは13時半を過ぎても来ない麻未さんを探しに行くと言って店を出たが、何故、事前に麻未さんのPHSに連絡を入れなかったのか。
→従業員の連絡先は管理しており、従業員がいなければ、まず電話連絡をするのが一般的である。しかし、オーナーはそれをしていない。

・何故、麻未さんを探していたはずのオーナーが、具合が悪いと途中で自宅に帰ったのか。
→オーナーが帰宅したのは15時で、パン屋本店から自宅までの距離は車で5分もかからない場所なのに、帰宅するまでに1時間半もの時間がかかっている。このことから、その1時間半の間に麻未さんを誘い込んで、どこかに幽閉したのではないかと考えられた。

・何故、オーナーは麻未さんにだけコーヒー研修に来いと持ち掛けたのか。
→パン屋本店ではコーヒーを販売しているが、本店の従業員は「受けたことがない」と証言し、そもそも、コーヒー研修というものがないことが発覚。麻未さんが通常勤務している支店では販売されておらず、「時間があるときに講習を受けにきなさい」というオーナーからの社交辞令だった。さらに、通常勤務していた支店の店長は「イタズラ電話の話は聞いているが、ストーカーの話は聞いていない」と話していることから、接点の多い支店長には相談せず、オーナーにはストーカーの相談をしていたという不可解な点もある。

事件のその後

パン屋のオーナーに疑惑の目が向けられ、連日ニュース番組で報道されたことから、パン屋は閉店に追い込まれた。パン屋のオーナーは現在、室蘭市内で別の飲食店を経営している。

両親らは、室蘭女子高校生失踪事件によって行方不明となった千田麻未さんを見つけ出す会を開いて、現在も麻未さんの手掛かりとなる情報を求めている。

また、麻未さんの家族は、現在も彼女の無事を祈り、いつ帰ってきてもいいように、失踪以前に住んでいた団地に住み続けている。