「パナウェーブ研究所(千乃正法会)」事件

「白装束集団」「スカラー波(電磁波)」「惑星ニビル」など、話題となった宗教団体

パナウェーブ研究所は、2003年頃に「タマちゃんのことを想う会」の背後組織として、週刊文春やフジテレビを始めとした全国メディアが取り上げたことで、全国的に有名となった団体である。

その容姿が全身白ずくめだったことや、また、パナウェーブそのものの知名度が低かったことから、「謎の白装束集団」として報道され、一躍、有名となった。

また、「惑星ニビルが地球に落下してくる」「共産主義者がスカラー電磁波で日本を襲ってくる」と主張して、会員に対し、山梨県にあるドーム型施設への移動を呼び掛けたため、「謎の白装束集団」が、特徴的な白いワゴンに乗って移動する様子が連日報道された。

移動に用いられた車両にはスカラー電磁波からの攻撃を防ぐとされる特徴的な模様が張り巡らされており、移動の様子が大変「テレビ映え」するものであったことから、報道が過熱化していった。

しかし、その後、2003年5月に虚偽の自動車登録をしていたとする電磁的公正証書原本不実記録の容疑で同研究所代表および自動車整備工場の検査員ら3名が有罪判決を受けたことや、同年12月に団体メンバー5名が傷害容疑で逮捕されたこと、また、2006年10月に、同団体代表であった千乃裕子代表(72歳)が亡くなったことなどから、活動が衰退。

2011年頃には、すでに活動は停止したものとみられている。

活動の経緯や事件

パナウェーブ研究所(千乃正法会)の概要

千乃正法会(パナウェーブ研究所)代表の千乃裕子氏

パナウェーブ研究所の設立は、1997年頃とされているが、設立年月日が不正確なのは、団体が任意団体として設立されたことに由来する。

また、千乃裕子を代表・教祖としており、設立当初は「千乃正法会」と称して活動していたことから、パナウェーブ研究所としての活動開始日が不明瞭となっている。

思想として反共主義を掲げており、「共産主義者が『スカラー電磁波』で日本を襲う」と主張。

また、1999年には「電磁界等を考えるシンポジウム京都会議」に参加し、スカラー電磁波問題について持論を発表、「人工的に作られたスカラー電磁波が自然環境を汚染することで、自然環境が破壊され動植物の生存の危機となり人類の滅亡に至る」「大量の人工スカラー電磁波の放出により地球の公転や自転にも影響があり、地球崩壊をもたらす」と主張した。

そして、2003年4月、団体が「タマちゃんのことを想う会」として、横浜市西区の帷子川などで生息が確認されていたアゴヒゲアザラシの通称タマちゃん(2003年2月12日、横浜市西区が住民票を交付)にエサを与え続けていることが報じられた。

当時、団体の知名度が低かったことから、マスコミも情報を把握しきれておらず、「白装束集団」「白ずくめ集団」と報道されていたが、全身白ずくめという異様な光景が世間の関心を引き、報道が過熱化した。

その後、2003年5月15日に「惑星ニビル星が地球に落下してくる」と訴え、メンバーらが福井県に移動を開始。その様子がワイドショーで取り上げられたことで、知名度がさらに上昇した。

「タマちゃんのことを想う会」と「謎の白装束集団」

「週刊文春」2003年4月23日号にて、多摩川に出現したアゴヒゲアザラシのタマちゃんを捕獲して自然に返すことを意図する「タマちゃんのことを想う会」とパナウェーブ研究所(千乃正法会)の関連が報道された。

取材に対し団体側は、2002年9月ごろからタマちゃんに餌を与え続けていることや、タマちゃんを捕獲する計画があることを明かした。

ちなみに、この捕獲計画の目的は、北極圏への移送などではなく、「スカラー電磁波による攻撃で苦しんでいるタマちゃんの救出を、宇宙人ヴェルに指示された」ものだと主張した。

団体メンバーらは、自身の身を「スカラー電磁波」から守る目的で白装束(長袖のコート型白衣・白マスク・白頭巾・白長靴)を纏っており、また、移動用の車両には、スカラー電磁波を防ぐ効果があるという渦巻き模様の図柄を貼り付けていた。

スカラー電磁波による攻撃を防ぐとされた図柄

そうした奇異な発言や行動、そしてテレビ映えする全身白装束などが関心を集めたことで、4月25日、フジテレビ『スーパーニュース』にて「謎の白装束集団・タマちゃん移送計画」という4分42秒のニュース報道を皮切りに、連日報道がされることとなった。

集団が福井県大野市九頭竜湖周辺や鳥取県岩美郡国府町(現・鳥取市)などに居座っている事や、団体の過去の行動が報道されるにつれてテレビ報道はさらに過熱化、5月1日には警察庁長官の佐藤英彦氏よって「彼らの装束や行動は異様だ。オウム真理教の初期に似ている。」と指摘されるまでに至った。

各地域住民や報道機関とのトラブル

過熱化する報道の中で、1997年9月に岡山県英田郡作東町(現・美作市)で町道をふさいだとして、責任者1人が往来妨害容疑で逮捕されていたことが判明した。

2003年4月26日頃から、岐阜県郡上郡八幡町(現・郡上市)から大和町にかけての林道を、同年5月2日頃には岐阜県大野郡清見村(現・高山市)の国道472号を占拠。

公道を占拠し、報道陣と衝突(ブルドーザーで報道陣を襲った)する場面が放送されたことで、前述の警察庁長官の発言に至った。

占拠の理由としては、いずれも「有害電磁波の攻撃でガンになった千乃正法会の千乃裕子会長を守るため」だと主張した。

また、団体は取材に対し「我々は反共団体だ」と発言したところ、誤って「環境団体」とテロップが付けられたため、右翼団体が抗議に押し掛けた一幕もあった。(しかし、反共団体としての活動に納得し、右翼団体は引き下がった。)

その後、「2003年5月15日に惑星ニビルが地球に落下してくることによる天変地異の発生」を訴え始め、会員に対して山梨県北巨摩郡大泉村(現・北杜市)にあるドーム型施設に避難するよう呼びかけたが、これは一時的なもので、最終的に団体は福井市五太子町に移動を開始し、5月11日には移動を完了した。

移動完了から約一年後となる2004年秋頃には、福井県の施設周辺でカラスに餌付けを開始。周辺地域の農作物に被害が発生したことで、自治会や福井市からの中止の申し入れがされたが、対して団体側は「野生動物の愛護」を主張。しかし、福井市は、2006年5月2日から1ヶ月間の駆除を許可し、地元猟友会員による駆除が実施された。

虚偽の自動車登録の疑いで逮捕

2003年5月9日、森山真弓法務大臣が記者会見で、公安調査庁が調査中であることを発表。

2003年5月14日、警視庁公安部、福井県警、山梨県警などは、パナウェーブ研究所の関係者が虚偽の自動車登録をしていたとして、電磁的公正証書原本不実記録の疑いで団体施設・関連会社全国12ヶ所を捜索した。

その結果、同研究所代表(千乃裕子とは別人)、自動車整備工場の検査員ら3名が起訴され、2004年5月25日、福井地方裁判所でそれぞれ懲役1年6カ月、執行猶予つきの有罪判決がなされた。

ちなみに、この虚偽登録の件について東京簡易裁判所は、9月2日までに、千乃正法会の元経理責任者に対し、電磁的公正証書原本不実記録・供用の罪で、罰金50万円の略式命令を出している。

団体メンバーを暴行し殺害

2003年8月7日、福井市の拠点施設で福岡教育大助教授の千草聡さん(当時40歳)が変死した。

千草さんは、反共産主義の論文執筆を行うなど、集団の中枢メンバーとして活動していた人物であり、8月1日から8日まで休暇を取って施設を訪れていた。

団体の119番通報によって救急車が到着した時には、千草さんは既に心肺停止しており、その後、搬送先の病院で死亡が確認された。

8月9日、警察の調べで、死因は背中の打撲による外傷性ショックと熱中症によるものと判明したと発表された。

2003年12月5日、福井県警は、団体メンバーの男5人を傷害容疑で逮捕した。

逮捕されたのは、藤森学(42)、水上啓(50)、鈴木雅博(51)、小室等(53)、内田建樹(59)の5名。(2003年12月5日読売新聞より)

警察の取り調べに対し、5人は共謀し「千草さんの背中などを竹刀や段ボールで作った棒状のもので何度も殴打し、背中や腰などに全治約2週間の怪我をさせた」ことについては認めたものの、「傷つける意思はなかった」と主張した。

しかしその後の捜査で、5人のうち数人が5~6時間にわたり、千草さんに約100回の暴行を加えていたことが判明し、傷害致死容疑も視野にいれて捜査が続けられた。

団体では「精神を高めるために」メンバーの体を殴打する行為が恒常化していたとみられ、県警は幹部の指示で行われた組織的犯行の可能性があるとみて、上層部の関与も追及されたが、立件には至っていない。

団体のその後

2006年10月26日、千乃裕子代表が72歳にして死亡。

自身や団体メンバーらは、「千乃裕子は末期がんの患者である」と主張していたが、監察医・上野正彦氏によって「死因は脳梗塞か心筋梗塞」であったことが報じられている。

2011年10月26日、福井新聞の取材・報道にて、研究所が以前と異なった普通の民家のような佇まいになっていることや、中の者から「パナウェーブ研究所はもう無い」という返事が返ってきたことが報じられており、自然消滅したものとみられている。

また、2019年3月31日放送のフジテレビ『報道スクープ映像 昭和・平成の衝撃事件!大追跡SP』では、「パナウェーブ研究所の元施設では現在15人ほどが集団生活をしていて、地域住民とのトラブルはない」との報道がなされている。