大阪府泉南市小1男児プール死亡事故(砂川小学校プール児童死亡事故)

監視員の不足が引き起こした、小1男児のプール死亡事故

2011年7月31日、大阪府泉南市立砂川小学校のプールで、同小1年の保苅築(ほかり・きずく)君(7)がおぼれて死亡した事故で、泉南市教委の規定で決められた監視員4人のうち事故当時は1人しか配置されておらず、市教委も実態を把握していなかったことがわかった。市教委が1日に会見で認めた。

市教委によると、同小のプールはこの日、一般開放中で、監視はビル管理会社に委託されていた。市の規定では、事故があったプールは常時4人で監視する決まりだったが、当日は監視員2人が休み、残る2人のうち1人もプール付近を離れていた。市教委の蔵野博司教育長は会見で「我々もチェックできず、不備があった」と謝罪した。

また、プールは最も浅い所で水深110センチあり、身長120センチ以上の人しか利用できない規定もあった。保苅君の身長は4月時点で111.4cmしかなく、市教委はこの点についても「監視員の確認が十分でなかった」と認めている。

事故の経緯と詳細

2011年7月21日、泉南市の10小・中学校でプールの一般開放が始まった。

同月25日午後4時ごろ、砂川小のプールを利用した女性から「監視員の数が少なかった」と市教委に電話。市教委は管理会社に「きちんとした態勢をとるように」と連絡した。

28日、市教委職員が同小プールの監視状況を現地で確認したが「問題ない」と判断。事故後、1人少なかったことが判明。

31日午後1時20分ごろ市教委の職員が同小プールを巡回。しかし、このときも2人欠勤していることには気づかなかった。

事故当日以降

教委によると、事故当日の7月31日、同小のプールが一般開放され、保苅君がおぼれていた大プール(全長25m)と隣の小プールには、付き添いの保護者らも含め60人ほどがいた。

事故当日となる2011年7月31日午後2時ごろ、保苅築君がプールに沈んでいるのを遊泳者の男性が発見。

捜査関係者によると、保苅君は友人と2人で来ていたが、別々に遊んでいた。30分ごとに全員をプールサイドに上がらせる休憩時間があり、午後1時45分~55分ごろの休憩時間が終わった直後、利用者の男性が沈んでいる保苅君を見つけた。

休憩直前には、数人が保苅君に似た男児を目撃。「プールの底のものを拾っていたようだった」「潜水していたようだった」などと話しているというが、休憩時間にプールサイドで保苅君を見たという利用者は見つかっていない。

市教委によると、プールの一般開放の管理運営を委託していた市内のビル管理会社が、規定では大プールに4人の監視員を配置することになっていたのに、事故前は1人だけで、発覚当時は管理室へ移動し、大プールを見ていなかった。

市教委の担当者は、同社から「委託料が少なく監視員の確保が難しい」と聞きながら、上司に報告せず放置。事故6日前には利用者から監視員不足を指摘されたが、事故当日に職員が巡視した際にも人数不足に気づかなかったという。

翌8月1日、保苅君の死亡が確認された。

8月2日、大阪府警が管理会社を業務上過失致死容疑で家宅捜索。

8月3日、大阪府警が市教委を同容疑で家宅捜索。

8月6日、事故発覚の10分以上前から、保苅君がおぼれていた可能性があることが捜査関係者への取材で判明。大阪府警は、ずさんな監視態勢で発見が遅れた可能性があるとみて調査。

監視員の不足

夏休みの小学校のプール開放が監視員不足で姿を消しつつある。共働きの家庭が増えるなど保護者の協力が得られなくなったのに加え、警備業者の慢性的な人手不足も影響している。近年の猛暑による熱中症の危険性も開放中止の動きにつながり、かつての「夏の風物詩」が曲がり角を迎えている。

「できれば開放したかったが、やむを得ない」

今夏のプール開放を中止した福岡市西区内の小学校の男性校長が嘆息した。同校では毎年、教職員や大学生に監視員を頼んでいた。開放時間は午前と午後の各2時間。1日平均約80~100人の児童が水しぶきをあげていた。しかし、2019年度では監視員を頼める大学生を確保できず、保護者にも声をかけたが集まらずに断念した。

福岡市によると、保護者や地域住民が監視員を務めた小学校と特別支援学校は、2016年度に約150校中96校あったが、同年度は35校となり、ここ3年で激減している。監視員をするには事前に応急救命処置などの安全講習を受ける必要もあり、市の担当者は「共働き家庭が増えるなど、協力してもらえる保護者が減っている」と話す。また、ここ数年、監視員を警備業者に委託する自治体もある。

2011年に大阪府泉南市の小学校プールで小1男児が死亡した事故をきっかけに、警察庁が翌年、プールの監視は「警備に当たる」との見解を示し、有償で監視を請け負う場合は警備業の認定が必要との通知を出したためだ。泉南市の事故では、市から監視業務を委託されたのはビル管理会社で、監視員がいない時間帯があったなど不備が明らかになった。

しかし、警備業界は慢性的な人手不足で、福岡市では西区のような郊外には配置できず、主に市中心部での対応にとどまっている。交通誘導や雑踏警備など一般的な警備業務に比べてプールの監視は事故リスクが高く、市内のある業者は「プールは割に合わない」と打ち明ける。

委託料も高騰し、財政難から開放を断念する自治体が相次いだ。横浜市は14年度からプール開放を中止。15年度から開放をやめた川崎市は、泳げない児童向けに民間のスイミングスクールを無料で受講できる事業をスタートさせ、好評という。

例年の猛暑も自治体を悩ませている。プールサイドで熱中症になる恐れがあるため、浜松市は18年度から、兵庫県宝塚市は今年度から開放を中止している。福岡市は今年度は暑さ指数を見ながら日々の開催の可否を判断する。市スポーツ施設課は「猛暑が続くようなら開放のあり方自体を見直す必要性が出てくる」と話している。

「プール解放」の衰退

夏休みに地域の小学校でプールが開放されるのは、今では当たり前の風景ではない。スポーツ庁などに残る統計によると、ピークの1974年度は全国約2万4000の公立小学校のうち8638校でプールが開放された。しかし、その後は年々減少し、2014年度は約2万校中3649校と半分以下に減った。

プールの監視を巡る国の考え方は、学校の関係者とみなされる地域住民や保護者の場合は警備業の認定は必要ないが、有償で第三者に外部委託する場合は警備業者が請け負うことを促している。

公共施設の運営などに詳しい日本大学の佐藤晴雄教授(生涯学習論)は「プールの開放は、夏休み中の子どもにとって地域との触れ合いを深める貴重な機会だ」と指摘。そのうえで「住民や保護者が学校運営に参画するコミュニティ・スクール(学校運営協議会制度)の仕組みを活用してボランティアを募ったり、他の安全資格を持った監視員を雇ったりできるよう、警察庁が求めている警備業者の要件を緩和したりする工夫が求められる」と話している。