措置入院のこれから

2020年02月

「ゆずりは」に学んだ措置入院制度の課題

2016年(平成28年)7月26日、男性が、神奈川県相模原市にある「津久井ゆずりは園」に立ち入り、同施設に入所していた入所者19名を殺害するなどしました(いわゆる「相模原障害者殺傷事件」)。男性は、同年2月19日まで、この「津久井ゆずりは園」の職員でした。男性が「津久井ゆずりは園」を退職しのは、同僚の職員に「重度の障害者は安楽死させるべきだ。」などと発言し、その後、病院に緊急措置入院させられたことがきっかけでした(同年3月2日、退院)。にもかかわらず、男性が凶悪事件に及んだことから、事件後、この措置入院や措置入院中の措置が適切だったのか、ということが話題となりました。 そこで今回は、この措置入院や今後の課題についてご説明していきたいと思います。

1 措置入院について

まずは、措置入院とはどんなものなのか簡単にご紹介します。

(1)措置入院とは?

措置入院とは、精神保健及び精神障害者福祉に関する法律(以下、法律といいます)29条(措置入院)、あるいは29条の2(緊急措置入院)に基づく制度で、ある一定の事由が認められる場合に、強制的に病院に入院させる措置のことをいいます。

なお、相模原障害者殺傷事件を引き起こした男性は、はじめ緊急措置入院を取られ、その後、正式な措置入院を取られています。

(2)どんな人、どんな場合が対象?

もっとも、措置入院はあくまで強制的措置ですから、あらゆる人、あらゆる場合が対象というわけではありません。

まず、措置入院は「精神障害者」の方が対象とされます。

具体的には、躁鬱状態、幻覚妄想状態、精神興奮妄想状態、昏迷状態、人格の病的状態にある方、意識障害、知能傷害を患っている方です。

さらに、その上で、「医療及び保護のために入院させなければ精神障害のために自身を傷つけ又は他人に害を及ぼすおそれがある」ことが必要です。

具体的には、自殺企図等、自傷行為又は殺人、傷害、暴行、性的問題行動、侮辱、器物損壊、強盗、恐喝、窃盗、詐欺、放火、弄火等他の者の生命、身体、貞操、名誉、財産等又は社会的法益等に害を及ぼす行為(原則として刑罰法令に触れる程度の行為)を引き起こすおそれがあることをいいます。

   措置入院の対象であるかどうかは医師の診断結果を基に、最終的には都道府県知事が判断します。

(3)措置入院はいつまで?

措置入院の解除の判断時期に関する規定はありません。
ただし、法律29条の4では「都道府県知事は、(略)、入院を継続しなくてもその精神障害のために自身を傷つけ又は他人に害を及ぼすおそれがないと認められるに至ったとき」は、直ちに対象者を退院させなければならない旨規定されています。退院の判断は医師の判断に基づかなければなりません。

2 措置入院の課題と今後

(1)相模原殺傷事件で明らかとなった措置入院の主な課題

① 男性については、措置入院先病院から相模原市宛てに、対象者を退院させる際に参考とされる「症状消退届」が提出されていました。しかし、その症状消退届に設けられた「訪問指導等に関する意見」と「障害福祉サービス等の活用に関する意見」の欄はいずれも空欄のままでした。

つまり、男性の入院中から措置の解除までに措置入院先の病院ではもちろん、症状消退届での宛先である相模原市においても、男性に対する支援の在り方について何ら検討されていないことが明らかとなりました。

② 相模原市は事件当時、措置入院対象者の退院後の支援に関するルール自体は設けていました。しかし、男性の実際の帰住先は相模原市内であったにもかかわらず「東京都八王子市」と認識していたのに加えて、個人情報保護の観点から、八王子市に必要な情報の提供を行っていなかったことが明らかとなりました。

(2)課題と措置入院の今後

   相模原障害者殺傷事件を受けて、今後は、「退院後いかに障害を持った方に対して継続的な支援を行っていくか」ということが課題となるかと思います。

   国は、平成30年3月27日、自治体向けに「地方公共団体による精神障害者の退院後支援に関するガイドライン」をまとめましたが、まだまだルール作りが進んでいる自治体はまだまだ少ないと思われます。さらに、ルールを設けている自治体が設けてない自治体、ルールは設けているが自治体によって支援対象者の範囲が異なるなどルール作りにばらつきがあります。仮に、支援の対象となり得る方が転居して場合どう対応するのか、統一したルール作りが求められます。

   また、実際の担い手である精神保健福祉士、保健師なども不足しているようです。そうした方々の人材確保、育成も課題です。そのためには、国による自治体への財政支援も必要となってくるでしょう。