水難事故での真実発見に向けて

2019年10月

高知市下田川の小学2年生の水難事故を受けて

今年8月22日、高知市下田川で水難事故が起きました。

毎年、夏になると連日のように、テレビなどで痛ましい水難事故が報道されます。今回もその中の一つです。

報道によると水難事故は、「高知市に住む小学2年生の男子児童が、8月22日午後1時頃から、小学2年生から5年生の合計5人の友人と同市内の下田川で遊んでいたところ溺れ、翌23日、川の中から水死体として発見された」、というもの。「なぜ、息子は死ななければならなかったのか。」「事故当時、現場で何が起きたのか?」、男子児童の父親は「真実が知りたい」という一心からSNSなどで情報提供を求めています。もがき苦しみながら溺れていった男子児童、真実が分からぬまま悶々とした日々を過ごされているご家族の無念さ、悲しみを思うと察するに余りあります。

こうした場合、「真実が知りたい」と願う家族としてどんなことができるのか?

1 真実を知るには警察を動かすしかない(警察に本気で捜査してもらう)

もちろん、ご家族自身が目撃者などに当たって真実を突き止める、という方法もあるでしょう。

しかしながら、それにはやはり限界があります。

まず人的な問題です。事故の規模にもよりますが、事故には多数の関係者が関わっていることがありそれらの方々から事実を聴かなければなかなか真実は見えてこない場合があります。

また、普段、事実を聴きだすことに慣れていない、という点も大きく影響してくるでしょう。

実際、上記でご紹介した高知市の水難事故でも、当事者である子どもたちが口を閉じてしまって事故当時のことを聴きだせないでいるようです。

そこで、ご家族の力に限界を感じた場合は、警察の力を借りることが必要となってきます。警察であれば、多くの人員を捜査、調査に充てることができます。また、警察官は捜査、調査のプロですから、人から事実を聴きだす能力に長けています。

2 警察を動かす(本気で捜査してもらう)にために知っていただきたいこと

(1)警察を動かすには告訴状の提出が有効

まず、警察は告訴状が提出されると受理する義務を負います。

 犯罪捜査規範63条1項

司法警察員たる警察官は、告訴、告発または自首をする者があつたときは、管轄区域内の事件であるかどうかを問わず、この節に定めるところにより、これを受理しなければならない。

また、告訴を受理すれば捜査しなければなりません。

 刑事訴訟法242条

司法警察職員は、告訴又は告発を受けたときは、速やかにこれに関する書類及び証拠物を検察官に送付しなければならない。 

もっとも、告訴状を受理する義務があるといっても、実際はいろいろな理由をつけられて告訴状の提出を拒まれることがあるようです。また、警察の受理は、告訴状の形式が有効であることが前提です。

告訴状の書き方が分からない方、有効に警察に告訴状を受理してもらいたい方は法律の専門家である弁護士に相談しましょう。

(2)少年については犯罪に当たらなくても調査されることがある

告訴は何らかの犯罪を犯した者に対する処罰を求める意思表示です。

ところが、報道によれば、高知市の水難事故の当事者は14歳未満の少年です。刑事事件では14歳未満の者は刑事未成年者とされ、責任能力がなく罪を問うことができません。そのため、高知市の水難事故では、仮に、告訴状を提出しようとしても受理されないかもしれません。

しかし、20歳未満の少年については少年法という特別な法律が適用され、少年法に基づいて警察の調査(捜査ではない)を受けることがあります。

警察の調査の対象となる少年の一つに

 触法少年

があります。触法少年とは、14歳未満で刑罰法規に触れる行為をした少年のことをいいます。あくまで刑罰法規(水難事故では、刑法の業務上過失致死罪(刑法211条前段)の適用が考えられます)に「当たる」ではなく、「触れる」行為をした少年が対象です。

警察の調査を促すためには、一度、弁護士に相談した方がよいでしょう。

3 水難事故から子どもの命を守るために

消費者庁は、子どもの川遊びにはライフジャケットを着用させるよう呼びかけています。

夏に限らず、秋などは川辺の近くでキャンプやバーベキューなどを楽しむ方もおられるかと思います。子どもの川遊びの際には、必ずライフジャケットを着用させましょう。