八王子スーパー拳銃強盗殺人事件(スーパーナンペイ事件)

スーパーの女性店員3名に5発の銃弾が撃ち込まれるも、いまだ犯人逮捕に至らず

八王子スーパー強盗殺人事件とは、1995年(平成7年)7月30日夜に東京都八王子市大和田町のスーパーマーケット事務所内で発生した拳銃強盗殺人事件である。

警視庁による正式な事件名は「大和田町スーパー事務所内けん銃使用強盗殺人事件」である。一般的な事件の名称は「ナンペイ事件」または「八王子スーパーナンペイ事件」とも呼ばれている。

本件は現在も懸命な捜査が続けられているものの、未だに犯人は逮捕されておらず、未解決事件となっている。また、捜査特別報奨金制度(公的懸賞金制度)の対象事件にも指定されている。

閉店後のスーパーマーケットを標的に銃器を使用して犯行がおこなわれた強盗殺人は前例がなく、日本の銃器犯罪の端緒となった事件でもある。

犯行動機については強盗説と怨恨説の両面が考えられているが(後述)、警視庁は強盗殺人容疑に重点を置いて捜査している。

犯行の経緯や動機

1995年7月30日21時17分頃、東京都八王子市大和田町のスーパー「ナンペイ大和田店」の2階事務所内で拳銃を持った何者かに女性従業員3人が射殺された。

被害者はスーパーナンペイ大和田店のパート女性従業員・稲垣則子さん(47歳)、私立桜美林高校2年生で夏休みのため同店でアルバイトしていた矢吹恵さん(17歳)、矢吹さんの中学時代からの友人である都立館高校2年の前田寛美さん(16歳)の3人である(年齢はいずれも事件当時)。

前田さんも同店のアルバイトをしており、この日は非番だったが、盆踊りに行くため矢吹さんを迎えに来ていたという。

犯行時間は21時15分から数分間だったと推定されている。

第1発見者は稲垣さんの知人であるAさんであり、Aさんは同日、稲垣さんから「迎えに来て」と電話があり、9時25分頃にスーパーに来たが、いつまでたっても稲垣さんが出てこないため、知人の女性を誘って9時50分頃に再度訪れた。だが、稲垣さんの姿は相変わらず見えなかったので事務所に入ったという。

この夜、スーパーの北西60mにある「北の原公園」では近くの人が主催した盆踊り大会が午後9時過ぎまで行なわれていて、太鼓の音などでこの銃声は掻き消されることになった。

近くを通りかかった人が午後9時過ぎ、銃声のような音を聞いていたが、辺りが賑やかだったためか、「花火かな」と思って通りすぎたという。しかし、この夜花火は近くで打ち上げられてはいなかった。

稲垣さんは部屋の隅の金庫にもたれ掛かった状態で2発の銃弾を撃たれ亡くなっており、腹部に刺し傷もあった。

女子高生の2人は部屋の中央で背中合わせにされ、粘着テープで手を縛られ、口を塞がれた状態で、1発ずつ至近距離から頭を撃ち抜かれていた。犯人は金庫にも1発放っており、計5発の銃弾を打っていたことになる。

女子高生2人は粘着テープで口を塞がれた上で互いの右手と左手を縛られており、うつ伏せにされた状態で至近距離から後頭部に1発ずつ撃たれて殺害された。

3人ともに即死の状態であったという。

犯人は銃撃後に金品などを何も奪わずに逃走している。金庫には鍵がささったままとなっていたが、ダイヤルの二重ロックされていた。こじ開けようとした跡があったが、金・土・日の売上金500万円はそのままとなっていた。

また、その他の貴金属類や被害者の持ち物には手をつけておらず、事務所内を物色した形跡すらも無いことから、犯行は金銭目的ではない可能性もある。

その後、犯行に使用された拳銃は、米コルト社のものそっくりに作られたフィリピン製のコピー銃、スカイヤーズビンガム38口径だと判明した。鍵となったのは、現場から見つかった弾丸に付いていた傷「線状痕」だった。

しかし当時、暴力団関係者などに出回っていたスカイヤーズビンガムをコルトだと思いこんでいる人も多かったため、正確な情報が集まらず、凶器の線から犯人に迫ることはできなかった。

また、現場には25~26cmの運動靴の足跡があった。ただこれは全国の量販店に流通する物で、購入者の特定は実質的に不可能であった。(後述の通り、2018年にはスニーカーのレプリカが公開され、情報提供が呼びかけられている。)

推定された犯人像と動機

以上の点から、当初は外国人による犯行ではないかと見られた。銃を扱いなれていること、3人をためらいもなく短時間で殺めていること、同じ多摩地区である東村山市や福生市で同様の手口のスーパー強盗事件があり、中近東系の外国人が目撃されていたことがその根拠とされた。

一方で目撃証言などから、「白い車に乗った若い男」による犯行という説がある。

事件直前の午後9時ごろ、現場から南へ20mほどの路上に、無灯火で停車している不審な白のトヨタ「チェイサー」を通行人が目撃している。乗っていた男は白っぽい上着を着ていたというが、所有者は現在も特定できていない。

また9時15分から35分までのあいだ、現場南西30mほどの交差点で、一時停止せずに西方向へと走り去っていく車が目撃されている。この車もトヨタ「チェイサー」、あるいは「マークⅡ」と見られる。運転していた男は25歳前後で、野球帽をかぶっていたという。

ちなみに第1発見者であるAさんが2度目にやってきた午後9時50分頃、駐車場に白い車が1台停まっているのを目撃している。ただ、この車は銃声のあった時間とずれがあり、上記の証言とはやや矛盾するため、関連がある可能性は低いとみられている。

動機についても、強盗説と怨恨説の両面があるが、特別捜査本部では強盗説を重視して捜査している。事件から15年となる2010年7月に公訴時効が迫っていたが、殺人罪・強盗殺人罪など最高法定刑が死刑の罪について、公訴時効を廃止した上で遡及適用する改正刑法及び刑事訴訟法が同年4月27日に施行され、長期捜査が続けられている。

1996年の「柴又三丁目女子大生殺人放火事件」(上智大学の女子学生が東京葛飾区の自宅で殺害、放火され全焼した事件)や2000年の「世田谷一家殺害事件」(東京世田谷区の宮澤みきおさん一家4人が殺害された事件)と並んで、「スーパーナンペイ事件」は警視庁管内における平成の『三大未解決事件』とされ、捜査が続けられることになった。

2008年、現場で検出された足跡に、溶接作業の時などに飛散する鉄粉が付着していたことが発表された。犯人が溶接作業に従事していたり、鉄工所に出入りしていたことを示すものである。またこの靴底は広島県内のゴムメーカー製で、約30種類の運動靴に使用されていた。この運動靴は吉祥寺や調布でも販売されていたという。

また、同2008年には実行犯を知る中国人男性の存在が浮上、2015年には女子高生が縛られていた粘着テープから採取された指紋が、その10年前に病死した男性のものと酷似していることが判明するなど、手がかりが全くなかったわけではないが、いずれも決定的な証拠にはならず、今も解決には至っていない。

捜査特別報奨金対象事件の中で捜査機関が犯人を特定していない事件としては、最も発生時期が古い事件である。

2018年7月17日には警視庁捜査1課によって、犯人が履いていたとみられるスニーカーが再現され、複製が公開された。

スニーカーは26センチで、現場に残された足跡から、以下の2種類に絞り込まれた。(それぞれ別の国内メーカーの製品)

  • 赤、青など7色あり90~91年に東京近郊の「丸井」で7800円で439足販売されたもの。
  • 黒色と白色があり93~94年に全国の「パルコ」で1万2000円で94足販売されたもの。

本件は、未だに犯人検挙に至っておらず未解決事件となっており、警視庁八王子警察署特別捜査本部は、事件解決に向けて鋭意捜査を継続している。

その後

事件が起こった「ナンペイ」は1998年に閉店し、今は駐車場となっている。(情報提供を求める立て看板が立てられている)

2006年7月、地元の「八王子防犯協会」は、事件解決につながる有力情報の提供者に懸賞金300万円を贈ると発表した。

暴力団やテロリストの専売特許だった銃器が「東京郊外の小さなスーパーで働く普通の市民」に向けられ、容赦なく殺害した事件の性格から日本警察は「日本における銃犯罪のターニングポイント」と位置づけている。

また、文化放送で2010年7月4日に、この事件を中心にして銃が扱われた事件や銃をなくそうとする運動の現状、そして銃を無くすためにはどうすればいいかを考える報道特別番組「大切な人を失わないために…八王子スーパー射殺事件から15年〜STOP GUN ラジオシンポジウム〜」が放送されることになった。この放送は後日、一部の地方局でもネットされた。