兵庫・宝塚ボーガン一家4人殺傷事件

「家族全員を殺すつもりだった」電話で伯母呼び出し ボーガンで家族ら4人殺傷の大学4年生

2020年6月4日に兵庫県宝塚市のアパートで発生した殺人事件。

犯行に使われたボーガンが、その後「有害玩具」指定を受けるきっかけとなった事件である。

事件の経緯と動機

2020年6月4日午前10時15分頃、宝塚市にある住宅で男女4人がボーガンのようなもので撃たれ、家族3人が死亡した。

死亡したのは兵庫県宝塚市安倉西の野津好美さん(75)のほか、野津容疑者の母親のマユミさん(47)、弟の英志さん(22)。電話で呼び出された伯母の百合江さん(49)は重傷を負った。

4日午前10時15分ごろ、兵庫県宝塚市安倉西2丁目で「女性の耳に、矢のようなものが刺さっている」と住民から119番通報。

伯母は、首に矢が刺さった状態で逃げ出し、近隣に助けを求めた。野津容疑者は現場に駆けつけた警察官に「おばさんにボーガンの矢を撃った」と話したという。

警察は殺人未遂の容疑で現場の家に住む大学4年生と自称した男を現行犯逮捕した。閑静な住宅街にパトカーや救急車のサイレンが鳴り響き、近隣住民からは不安や驚きの声が上がった。

現場の住宅では殺傷能力が高いとされるボーガンの矢が残されており、この矢は命中したあと引き抜きにくくする『返し』が付いていた。

容疑者は容疑を認めており、「ボーガンで4人を撃った」「祖母、弟、母の順番で撃った。伯母も電話で呼び出して撃った」「家族全員を殺すつもりだった」などと供述。弟は風呂場のあたりで倒れており、2本の矢が頭に刺さっていた。病院搬送された時はまだ息があったが、回復せず亡くなった。

マユミさんが1階の台所兼リビング、好美さんが1階の部屋、英志さんは1階浴室前でそれぞれ倒れていた。英志さんの頭に2本、ほか3人の頭や首にそれぞれ1本が刺さっていた。ボウガンは1階台所兼リビングで見つかったという。犯行には5本の矢が使われており、使われた矢はいずれも長さが53cmあった。

弟は頭部2カ所(1本は右耳付近に刺さったまま、もう1本は左目の上と左後頭部の間を貫通して傍に落ちていた)を撃たれており、同月6日の司法解剖で死因は「出血性ショック」であった。また他の2人の死因は頭部を撃たれたことによる「外傷性くも膜下出血」であった。

6月6日午前、容疑者を神戸地方検察庁に送検した。

野津英滉容疑者について

逮捕されたのは宝塚市内に住む23歳元大学生の男・野津英滉容疑者。

地元の公立中学校出身でサッカー部に在籍していた。近隣住民らの評判は「変わっている」「普段はおとなしいけれど、スイッチが入ると気性が激しくなり、性格が180度変わった」と伝わっており、当時は学校も休みがちで、クラス内での存在感は薄く、家庭環境が複雑だったという。

亡くなった弟の知人らによると、ここ数年、容疑者は母親や弟と関係が悪かったとみられ、「とにかく兄貴(野津容疑者)だけは嫌いだと。何が嫌いなのかは聞いていませんが、兄貴はうっとうしいといっていました」と話している。

逮捕当時、容疑者の肩書きは大学生と報道されていたが、後の調べで休学中の2019年9月末に学費未納で大学を除籍になっていたことが判明し、6月6日、一部メディアは容疑者の肩書きを大学生から無職に切り替えた。野津容疑者は、除籍について警察から知らされるまで把握しておらず、警察に対し「そうですか、そしたら無職ですね」と答えたという。

高校卒業後も交流があった同級生によると、高校時代からほぼ毎日ガソリンスタンドでアルバイトをしていて、経済的に苦しい様子だったという。

判決とその後

凶器となったボーガンは銃刀法の規制の対象外で、店頭やインターネットでは競技用やレジャー用として販売されていることが多く、成人であれば身分証を提示するなどして購入できた。

2020年6月5日、兵庫県はボーガンを「青少年愛護条例」にある「有害玩具類」に緊急指定した。

2020年6月6日、菅義偉官房長官が記者会見で、ボーガンの販売や所持の規制を検討する考えを示した。

2020年6月11日、岡山県が「青少年健全育成条例」に基づき、クロスボウを有害玩具に指定するための審議を同月15日に行うことを発表し、審議の結果、全会一致で有害玩具に指定する方針を固めた。