トリカブト保険金殺人事件

2020年02月

妻に多額の保険金を掛けて毒殺した夫は何を思って最期を迎えたのか

犯人である神谷力は事件が発覚するまでに事件の被害者になった女性含む3人の妻を無くしていた。

この事件は犯人であり夫だった神谷と殺された妻、利佐子さんが楽しい沖縄旅行に行っていた先で妻がトリカブト毒で毒殺されると言う展開から始まった多額の保険金が絡む殺人事件である。

1986年(昭和61年)5月19日、神谷と妻、利佐子さん(38歳)と妻の友達の3人と共に沖縄旅行に行ったのだが神谷は急用を思い出したと那覇から大阪に帰ってしまった。

妻と3人の友人が石垣島のホテルにチェックインした直後に妻が大量の発汗、悪寒、手足麻痺で苦しみだし病院に搬送したが容態は悪化し午後3時4分に死亡が確認される。

神谷は自分を受取人として利佐子さんに1億8000万の保険に加入していたが、保険会社への加入は死亡のわずか20日前であり、月々18万円の掛金は1度しか支払われていなかった。

保険会社は契約時に利佐子さんの神経系の病気における通院歴を告知していなかったことを理由に、保険会社は支払いを保留した。

それに対し、神谷は『病気に対して告知義務はなかった』として保険会社を相手に、民事訴訟を起こし神谷が勝利したが保険会社が控訴した二審で妻を検死した元大学教授が妻の死因が毒物による毒殺だった可能性がある事を証言した事で神谷は訴訟を取り下げた。

事件発覚は、妻(利佐子さん)の急死から5年後の(平成3年)6月9日に神谷が横領容疑で逮捕されたことで明るみになった。横領容疑の捜査の中で5年前の妻の不審な死が保険金殺人だったのではないかと言う疑いが浮上し7月1日に殺人と詐欺未遂で神谷を再逮捕した。

しかし、5年前の事件で証拠が無いと思われていたが、急性心筋梗塞で亡くなった時に急死につながる異常がなかった事から、その死を不審に思った当時の元大学教授の大野曜吉が妻の心臓や血液を保存していたことが事件解決の糸口となった。

その心臓を東北大学や琉球大学で分析した結果、トリカブト毒とフグ毒(テトロドトキン)が検出され妻が毒殺され事が分かったと同時に、事件前に神谷がトリカブト62鉢、クサフグ1200匹を購入していることも判明し、神谷は7月1日、殺人と詐欺未遂で再逮捕された。

犯行の動機や経緯

公判では犯人がいつ毒を飲ませたのかが争点になった。

公判には神谷が63株もトリカブトを購入したとして神谷にトリカブトを売った店主も出廷。

犯行の動機は神谷が消費者金融から多額の借金をしていたことであり、また、その返済のために神谷は自分を受取人にして利佐子さんに1億8500万円の生命保険金をかけていたことが分かり、多額の保険金をかけた殺人事件だと言う事が明らかになった

保険金殺人を計画した妻とのスピード結婚も保険金目的が動機であった事から、検事側は急死した前の妻も毒殺されていた可能性を指摘すると共に、神谷の自宅から押収した毒物が大量だった事から、神谷は次の保険金殺人も計画していたとされた。

これに対し神谷の主張はトリカブトは観賞用のため、また、フグは起業するため購入したと裁判で反論した。

神谷は「トリカブトのアコニチンは即効性があるので、すぐに容態が悪化するはず。」「自分が大阪に帰ってから1時間40分後に容態が悪化し死亡した妻の死に自分は関係なくアリバイもある」と主張した。

これに対して再反論のため検察は千葉大学の大野元教授に分析を依頼した結果、トリカブトのアコニチンとフグのメサコニチンは調合の仕方によっては二つの毒の効力を調節できるという事が証明された。

判決とそのあと

1994年(平成6年)東京地裁は神谷に対し求刑どおり無期懲役を下した。

神谷は控訴したが2審の東京高裁も1審判決を支持し神谷は最高裁に上告するも2000年に棄却され神谷の無期懲役は確定した。

公判中から自らの無実を訴え、『被疑者 ートリカブト事件』を著しており、服役後も刑務所の中から『仕組まれた無期懲役ートリカブト殺人事件』を著すなどして無実を訴え続けたが2012年(平成24年)11月に大阪医療刑務所で73歳で病死した。