山口・光高校いじめ報復爆破事件

「いじめの仕返し」18歳少年が教室に爆弾を投げ込む

2005年6月、山口県光市の県立光高校校舎2階の3年1組教室に、何者かが爆弾のようなものを投げ入れ爆発させた。

まもなく、3年2組のA(当時18歳)が取り押さえられた。犯行の動機は「いじめの仕返し」だった。

事件の経緯と動機

事件当日6月10日の朝、山口県立光高校で、それまで無遅刻無欠席だった3年生の生徒が初めて授業前のホームルームに遅刻した。

その生徒はそのまま1時間目に授業に出たが、2時間目の英語を欠席。教諭は気になったが、授業があるので捜しに行くことは出来なかった。

その間に生徒はトイレに行き、「あるモノ」をバッグから取り出していた。

午前10時頃、校舎2階の3年1組の教室では数学の授業が行なわれていた。その時、何者かが教室に、廊下側のドアからガラス瓶を投げ入れた。

ガラス瓶は教壇側中央の机に当たった後、ベランダ側に転がって2秒ほどして突然爆発した。窓ガラスは割れ、生徒らは負傷し、ショックのなか逃げ惑った。

ガラス瓶が投げ入れられた直後、数学の女性教師がある生徒の名を呼び、「待ちなさい!」と追いかけた。

その生徒は隣りの2組のA(当時18歳)という男子生徒だった。

Aは2階の渡り廊下から1階に飛び降り、校庭に逃げたところを養護教諭に取り押さえられた。

傍にはモデルガンが置かれており、爆弾がうまく爆発しなかった場合、これを使用するつもりだったとみられる。

結局、この爆発事件で、1組や隣りのクラスの生徒を含む58人が病院に搬送され、男子生徒1人が重傷、他の生徒は軽傷を負った。

Aは逮捕直後、動機について「1組の生徒に恨みがあった。爆発物は自分で作った」と供述し、いじめがあったことを示唆したが、担任教諭は「いじめはなかった」とした。

少年Aについて

Aには両親と大学生の姉、高校1年の弟がいた。

小学校2年のとき、衛生検査で「歯をみがきましたか」「頭を洗いましたか」というような質問がされたが、Aはこのときに「毎日、頭洗うてない」と答え、友人から不潔をからわかれ「A菌」と呼ばれるようになった。

また「Aから蚊取り線香の匂いがする」とある1人言い出したことで、その商品名から「チョ―ル」というあだ名がつけられた。

中学時代は友人と6人でサバイバルゲームに明け暮れた。

また、学業の面では理科と数学が得意で、第1志望校である地元の進学校、県立光高校に進学。

そんなAに大きな変化が訪れたのは、高校入学からだった。

それまでは友人がいたが、高校では友達ができなかったようで、教師やクラスメイトが話しかけても、なぜかろくに返事もしなかったという。

そのうち、こういった態度にイライラしたクラスメイトから無視され始めた。悪循環は続き、Aは周囲から「暗い」と言われて余計に塞ぎこむことになった。Aは中学時代の友人に「高校では友人づくりに失敗した」と漏らしている。

2年時になると、「(Aを)笑わせようじゃないか隊」が結成された。休み時間に机に座ってぼんやりしているAのまわりを囲んで、無意味に名前を連呼したり、顔をのぞきこんだり、小学校時代のあだ名「チョ―ル」と呼んだり、またある時はAの頭に香水をふりかけたりするなどの行為が行われた。

こういったいじめに対してAは睨みつけたり、カッターナイフを取り出すなど怒りの感情を見せたという。

「仕返しをしてやる」

犯行の1週間前、Aは中学の友人に「仕返しをしてやる」と話していた。

相手は当然、いじめの首謀者であった3年1組に在籍する生徒Xであった。

Aはインターネットや書籍から爆弾の作り方を学んだといい、花火から火薬を取り出して、威力を高めるために鉛の粒や釘と一緒にジュースのガラス瓶に詰めて爆弾を作った。

事件直前には自宅近くの海岸で爆発実験を行っており、爆発が予想以上の威力だったことに驚きはしたものの、しかし、Aの決意は変わらなかった。

そして、事件当日の6月10日の1時間目終了後、Aはバッグを持って教室を出た。

前述の通り、その後Aはトイレで爆弾を取り出し、1組の教室へそれを投げ入れた。しかし、爆弾は標的とした生徒Xの方へはいかず、生徒Xは臀部に擦り傷を負った程度であったという。

その後

事件後、県教委が派遣した臨床心理士や同校教諭によると、1組の生徒や、Aと同じ2組の生徒がいじめの事実を証言したという。

また、複数の教職員が「授業中にAが質問に答えられないでいると、クラスから苦笑がおこった」という事実についても認めた。

教師や他の生徒にとっては一見何げないことであったが、おとなしく、静かでいたかったAにとって、これは「いじめ」に他ならなかった。

2006年1月30日、同校は県教委に事件の最終取りまとめとなる「第二次学校事故報告書」を送った。その中で、「(本事件は)カメラ付き携帯電話で写真を撮るなどのいじめと、加害生徒の個人的特性が重なり合い、誘発されたものである」と結論づけた。

Aは事件後、取調べを受けた際に「黙っていることを悪く言われるのは学校と一緒だ」と漏らしたという。

ちなみに、本事件と同様に「爆弾を使用したいじめの仕返し」をテーマとした漫画「僕たちがやりました」(映画化もされている)について、過去記事で紹介していますので、ぜひご確認ください。