逗子ストーカー殺人事件

ストーカー規制法の盲点と逮捕状読み上げの不備が招いた悲劇

2012年11月6日午後3時10分頃、神奈川県逗子市小坪6丁目の共同住宅で、小堤英統(40)が2階にある出窓の外側にひもをかけ、首をつっているのが発見された。

110番通報を受けた神奈川県警逗子署が調べたところ、住民でフリーデザイナーのMさんが1階のベッドの脇で血を流して倒れており、近くに血の付いた包丁が落ちているのを発見した。その後、間もなくして、小堤とMさんの死亡が確認された。

県警は小堤がMさんを刺した後、自殺を図った疑いが強いとして、容疑者死亡のまま横浜地検横須賀支部に書類送検した。

送検容疑は6日午後2時頃、洋包丁でMさんの首などを複数回突き刺して殺害したというものだった。

事件の経緯

小堤とMさんは2004年頃に交際していた。

約2年間の交際後別れたが、その直後からMさんのもとに小堤から嫌がらせメールが届くようになった。

Mさんが警察署に相談したことで一度は止むが、翌年11年4月には「刺し殺す」と脅すメールが届いた。

それを受けて、逗子署は6月に小堤を脅迫容疑で逮捕し、9月には執行猶予3年の有罪判決が確定、保護観察処分となった。

東京保護観察所は、メールも含め「Mさんに一切接触しない」という特別遵守事項を小堤に課した。

ところが、12年3月から4月にかけて「結婚を約束していたのに別の男と結婚した。契約不履行で慰謝料を払え」などというメールが、20日間で1449通届いた。

Mさんは逗子署に相談したが、同署は文言からストーカーや脅迫にはあたらないと説明し、執行猶予も取り消されなかった

以降、小堤の嫌がらせは確認されておらず、事件当日になって突然Mさん宅に現れたとされている。

その後

県警の家宅捜索で、小堤がMさんの以前の勤務先やインターネットを通じて情報収集を行っていたことがわかった。

また、2011年6月の逮捕以前は、「逗子市」に住んでいるとしか認識していなかったMさんの住所を、釈放後には「逗子市小坪6丁目」と詳細に把握していた。

これは、県警が脅迫容疑で小堤を逮捕した際、逮捕状に記載されたMさんの婚姻後の名字や住所を読み上げたことが原因だった。

県警はMさんから「小堤には伝えないでほしい」との要望を受けていたが、対策は取られなかった。

本件を受けて、警察庁は逮捕状請求時に現住所などが特定されない工夫をするとともに、保護観察所との情報共有を進めるよう全国の警察署に指示し、2013年4月から保護観察所と警察の間で処分中の遵守事項内容の共有を始めた。

また、ストーカー規制法に連続メールを取り締まる文言がないという問題も浮上したため、電子メールの連続送信を規制対象に加えた法律が13年7月に施行された。